金曜日

中川さんが丁寧な計算と新鮮なアイデアを持ってきた。特に、新鮮なアイデアは素晴らしく、ある作業仮説の下でずっとやりたかったことができた、というものだった。本物(=正解)かどうか論理的につめる価値があるので具体的に考え始めたい。まずは伊丹君に話して、スタート。その伊丹君は、夏休みに新しい恒等式を導いてきた。その恒等式は非常に不思議な形をしていて、物理的に何がおこっているのか、時間をとってあれこれ検討した。これも整理整頓が必要だな。(夏の学校で、中山さんに指摘された問題を解決しようと伊丹君がのたうっている中で見つけたらしい。)恒等式恒等式でしかないが、それを出発点にとると全く違う風景が見えるので面白い。

僕は、水曜日の夜のプランにしたがって、問1と問2を考えていたが、問1はできたが問2に中々いかない。

問1は、次のようなものである。今のモデルHでは、エネルギーゆらぎが高温からかなりの低温までだいたい一定値をとっている。(これじたい不思議。)この値をA とする。とすると、高温極限から温度をさげていくと A\beta^2/2 だけエントロピーがさがる。高温極限のエントロピーをS_0とすると、S_0-A\beta^2/2 =0 となる \beta でエントロピークライシスが起こる。その値を知りたい。ところがそのためにS_0が必要になる。離散自由度の場合には、状態数の対数で全く問題がないが、XY模型を変形した模型なので、高温極限のエントロピーの値がすぐには分からない。それを求めよ、という問題である。精度をいれてシャノンを考えたり、相空間の体積で定義するのは違う。精度や目盛の選択に依存してはいけない。思ったより長い時間がかかってしまったが、答えを得た。そして、そこからエントロピークライシスの逆温度を評価すると、お、まぁ、そんなところだろう。実際はクライシスを回避するかのごとく、熱容量が急に小さくなって固まる。

問2は、モデルHの平均場的版をつくって、このエントロピークライシスを計算せよ、ということ。例えば、BM模型だとベーテ格子上の計算でエントロピークライシスを具体的に見える。そのレベルの計算をすることで状況証拠を積み込もうとしている。(モデルの詳細に依存する部分がまだよく分からんから、その機構を理解したいと。)これが中々うまくいかない。統計力学の修行が足りてない。