金曜日

昨日の件、気になったので、徹底的に文献調査を行う。呆れること多し。とある教科書、量が未定義なまま議論を展開している。それが参考にしたらしい別の本を見ると、あれ、ほとんど全く同じ記述で、同じく量の定義がない。ふーむ、こういうのは、見るだけでも不快になる。

あれこれ回ってやっと状況を理解した。微視的な熱の定義を「平衡状態」で僕のと一致するのを初めて書いたのは、森先生だった。1958年。(非線形流体でも正しい定義を書いているのはまだ一つもない。)その論文がやろうとしたことや混乱している点などは5月に理解したつもりだったが、中身までちゃんと見てなかった。そして、それがグリーンの公式とは違うことはちゃんと明記してある。ただ、その理由はおかしいように見える。さらに、1960年にグリーンさん自身もその違いについて考察している。不思議なことに、森さんが既に書いていることを繰り返しつつ、少し定量的に踏み込んでいる。でも、そも理由はおかしいように見える。で、1975年の有名なレビューで、グリーンの見解が良く知られている、という書き方で紹介されている。

グリーンさんは現象論の範囲の考察だし、森さんは近似と設定がこんがらがっているので、そもそも真剣に比較検討できるようなものではない。僕は自分の表現と導出があり、そして線形流体の範囲では日高さんの結果があり、これらは設定を指定したあとは一点の曇りもない。それを踏まえて、もっとも合理的な理解を再確認した。(査読者のひとりがクレームをつけたこととも関係し、それに対する丁寧な応答を書いたのだった。)ただ、その理解は「予想」を含んでいるので、ウラがとれていない。数値実験で証拠を抑えるか、理論的にそこに切り込むか。後者のアプローチもときどき考えている。なんとなくのイメージはあるのだが、それをどうやって示すのか、まだよく見えない。