日曜日

朝、かなり意味不明な書類と格闘。まぁ理解したが...。これ、労力結構いるなぁ。他に溜まっている諸々を叩くべきなのだが、精神的にばてていたのでやめた。この2週間の作業量はすごくもう2ヶ月くらいたった気がしている。まだまだ終わっていないというか、始まったばかりなのだし、3月中旬までの長丁場なので時々は意図的に休もう。

気になったので、Esposito-Marra JSP '94 を丁寧に読み直す。これは、Liouville方程式に対するスケールパラメータに関する摂動で非圧縮流体方程式を導いている論文である。筋と設定は理解していたが、詳細はごちゃごちゃしていて、合っているかどうかすら不明、という位置づけだったのだが、もう一歩踏み込んでみた。途中から「仮定」しまくっているのだが、何というかご都合主義的仮定になっていて、途中で「相当に怪しい式」を経由している。大体、(専門は数理物理の人たちのはずなのに)、ものすごい強い設定でやっていて、そんな設定で流体方程式が出せるのなら(証明をしない)理論物理の人でも驚きだろう、、という方針で押している。(この著者たちはYau さんとの連名でASEPでの流体方程式を数理物理として証明しているらしい。)

あと、60年代のズバーレフとマクレナンも読み直す。これなぁ、初めて格闘したのは30年前だった。さっぱり分からなくて、何度か読み直すチャンスでも分からず、今回自分が流体方程式へのパスを通したGW以降に「正解との違い」を分かったつもりでいた。それをさらに精度をあげてみた。ふたりとも(彼らの考えたい状況では)間違っているが、線形応答領域では正しい。(くりすてぃあんとかれるのマックレナンの解説はミクロからやっていたっけ。。マックレナンがミクロからやろうとしたことを正しくやる、という解説も必要かもしれない。)ただし、ややこしいのは、マクレナンのある表現はマックレナンが考えている状況では間違っているのに、僕が考えている状況で僕が得た表現と(偶然)一致している。(読み替えというか解釈をした上で。)そもそも、物理量の定義等がきわめて分かりにくいので、マクレナンの解読できている人がどれだけいるかは不明。ズバーレフには正しい表現は見つかっていない。(そもそも、マクレナンとズバーレフの違いを理解している人とかいない気もする。1年前の僕は理解してなかった。)どう書けばいいのだろうか。(i) 考えている状況が違う、(ii) その考えている状況では彼らは(線形領域を除いて)間違っていて、(iii) でも、マクレナンは僕が考えている状況で正しい式も書いている -- って、うーむ。今のところ (i) しか書いていない。(ii), (iii)を的確に書くのは難しいよなぁ。長い論文ではこのあたりもきちんと解説すべきなのだろうか。需要があるとも思えないが。。

こういうことを考えたのは、昨日、流体論文を大改訂をした影響である。「色々な論点をごちゃごちゃ書くのでなく、一般的関係式をメインにして、全体の構造をはっきりさせよ」、という宿題に答えたのだが、そうすると、ずばーれふ=まくれなん色が強まったので、先行研究との差異をより意識してきたのである。使っている恒等式はゆらぎの定理の変種だし、査読者もその方針が気に入ったらしいのだけど、この恒等式は(マックレナン、ズバーレフに非線形射影を入れた)'73のKawasaki-Guntonにも似たのがあって....って、いや、そもそも、ゆらぎの定理の萌芽(類似物)がKawasaki-Guntonにあるのだから、それをいったら現代非平衡統計力学そのものが全滅かもしれないが。

まぁ、しかし、初期条件に対して強い仮定があるものの、強い非線形領域でも成り立つ流体方程式をストレートな計算で出せている、というのは事実だから、このメッセージを前に出して、論文公表するのでよいのだろうと思う。独創性少ないが...。ちなみに、初期条件に対する強い仮定をはずしたいのだが、これは本質的かつ難しい。ざっくり言うと、適当にごちゃごちゃやって時間発展したとで、系をみると「あぁ、まぁ、局所平衡分布に近いよね」ということに加えて、「局所平衡からのずれも、まぁ、普遍的にこんな感じでいいんでないの」ということだが、これを一般的にもってくる処方箋は分からない。上で書いたEsposito-Marra は(計算上で仮定しまくりながら)それをひっぱってくる、という試みである。イメージしていることは何となく分かるのだが、ちょっと無謀だろう..というか、そういうことは(計算上の仮定とかで)理解できるようなことではないように思う。

何をしていいのかすらよく分からない。これ、熱力学第2法則の話で、1度操作して一晩寝たあとで、もう一度操作するときの定式化と似ている。その問題でおそらく「平衡分布」の概念をもっと超越的に捉える必要があるのと同じように、「局所平衡分布」の概念も「ぐぁっ」とつかまえて...。これができたら真の理解だが...。