金曜日

パリ会議後半(UCGP)1時間講演のラフスケッチまで終了。このスライドで、明日1時間喋れ、と言われても、喋るだけだったらできる。だだし、今の版では、全く伝わらないだろう。それを分かった上で、とりあえず、今日までに(本当は昨夜までに)、全体の流れをまずは作りたかった。最初からスライドのベストの配置とかを考えると、全体を見失い、ストレスだけが溜まるから。もちろん、それを分かった上での仮版なので、安心してはいけない。ここからが問題で、構成を練り直すだけでなく、足したり引いたりの入れ替えを11月27日までにやりたい。そこからあとは、細かい調整だけにする。その時間ならある。

帰りの電車では、いよいよパリ会議前半(日仏)の30分のプロットに入る。実はここに課題3を解決して入れたいのだが、これからである。(この課題3は、肯定的になれば、きちんとレターとして出版することも視野にいれている。課題1、課題2は、僕自身の研究の着実な補足みたいなもので、今回のUCGP講演に新たに加わっているけれど、今のところ論文として切り離すほどの案件ではない。課題2が完全解決したら切り離すけれど、途中で難しくなっておいてある。課題1は終わったけれど、ネガティブだからなぁ。。)

この30分講演はどちらかというとinformal seminar みたいなものなので、色々な構成案がありえる。課題3の結果の行く末を切り離して、とりあえずこの週末にばばばーとスケッチを作ろうか。もし、課題3がうまくいったら、ウエイトを少し変える程度でいいや。

Nemoto-Sasa がやっと掲載決定になった。改訂版のときに、付録をひとつ足して、全部手で計算できる模型を紹介している。これはストックホルムでフレデリックが、「この模型だったら計算できるだろう。この例で具体的に計算して理論の感触をつかむのが大事だ。」と指摘して、彼が白板で計算しはじめたものだった。ストックホルムでは色々なことがありすぎて、それは途中だったけれど、根本君が帰国後にフレデリックともやりとりをしながらすぐに計算を終わらせて、フレデリックの「付録を是非ひとつふやしてこの結果を入れよ」というアドバイスに従って改訂したのだった。実は、ストックホルムではすぐに思い出さなかったのだけど、その模型は、Tomita-Tomita で議論されていたものそのままだった。(つまり、Nemoto-Sasaで追加した付録では、不可逆循環の母関数の変分公式を全て明示的に計算したことになっている。)Tomita-Tomita は、京都で富田さんがカオスの研究にスイッチする前の主要テーマだった。(太田隆夫さんの修士論文のテーマ)そういう話は、最近の非平衡の人はそんなに知らないだろうけど、一言リマークを書いておいた。そしたら、おぉ、査読者がそこにも反応していた。基本的に全てを絶賛してくれているのだけど、どうも最近の非平衡統計でアクティブな人でなく、ひとつ前の世代で活躍されていた方かな。いずれにしてもありがたいことだ。

翌日付記:上の日記をみていていくつか思い出した。富田さんは亡くなる直前まで定期的にお会いしていたので、そのお考えの一端くらいは知っている。特に、変分形式に大変興味をもっていて、修士の僕が力学系の変分原理のレビューを研究室でしたときも、研究としての可能性を考えられようとしていた。(当時の僕のレベルでは、研究に展開する力がなかったのだけど。)そういえば、確か、双対系での変分原理を不可逆循環と関係づけて議論していた気がしてきた。(今風にいうと、詳細つりあいが破れたとき、「不可逆循環がゼロでなくなること」と「双対系がもとと違ってくること」の関係だったか??)[論文確認せずに脳内残像に頼って書いているので間違っているかもしれないが。この機会に見直すとよいかもしれない。]

ということを書いていると、最終講義の記録 を見返したくなった。49歳で学生紛争の最中の学部長を経験される、という今の僕たちの学内仕事とは比べようもない激務を経ている。その前には、久保=富田という量子線形応答理論の先駆けを残し、その後に、非平衡ゆらぎやカオスの先駆け的研究をしている。僕は、大学2回生だったけれど、富田さんのその最終講義に出席していた。蔵本さんによる追悼文 も併せてみると色々と興味深い。あ、いかん。スイッチが入ってしまい、色々なことを考え始めたが、自制する。