金曜日

どんなに遅くても5月までに公開すると決めていたタイル論文は、ここに公開されている。残念ながら、目指していたところにはまだ到達していない。ただし、"all or nothing"的な考えは、例外を除いて、何も生まないと思っているので、真のベストでなくても、ともかく現状のベストを公開した。(クラウジウスのエントロピー論文が出る前の苦悶の時期を見よ。それらは全て論文として公開されている。最後の論文が出ることが分かっていたら途中はいらないのだが。僕は、あの(誰も知らないだろう)途中の苦悶も好きなのだ。)

まだ、投稿はしていない。まだ不案内な分野でもあるので、ちら見でも、熟読でも、間違いや誤解を招くところがあれば、それを踏まえた上で、投稿するのがよいと考えた。「見た。まだ読んでないけど。読むつもり〜。」とか「自由な時間がとれたらできるだけ早くよむわー。でも忙しいのよねぇ。。」とか、(ガラス統計力学のプロの方たちから)温かいメッセージは頂いている。日々忙しくて、他人のpreprintを丁寧に読むのは、査読になったときを除いて少ないだろうけど、まぁ、どういうポカをやっているか分からないし、自分の冷却期間も必要なので、しばらくは放置して待っている。

事務的なことでバタバタすることが複数あって、研究はなし。ダメだな。気分的にさえないので、帰りの電車から、前から読みたかった論文を読み始めた。"Undecidability and Nonperiodicity for tilings of the plane", (R M Robinson, 1971) だが、これは非常に面白い。Wang tile の問題は、途中から、より少ないタイル種数での非周期タイルの構成に焦点がうつっていったように見えるが、非周期タイルそのものは僕にはどうでもよい。(ガラスとは関係ない。準周期は僕の目標ではない。)むしろ、もとの問題の「決定不能問題との関わり」や「計算不能タイル」に興味がある。Robinsonの論文は、決定不能問題の別証明を丁寧に与え、計算不能タイル構築の基礎になっている。前にざっと眺めたときに、教育的に書かれていてよい論文だと思っていたけれど、期待以上だった。

「計算不能タイル」とは、サイトをあたえたときにタイルの種類を返す(整数から有限状態への)関数が計算不能であるような充填パタンのことである。これは、非周期タイルとかとは全然違う。(現在世界最小記録の13タイルの非周期タイルのタイリングパタンは計算可能。)2次元でも、計算不能タイルの統計力学を考えれば、ガラス相があるんじゃないのかな、、というのが素朴な動機で、それで文献を調べていてロビンソンのを見つけたのだった。今年の1月だったかな。ま、ぼちぼちと。