木曜日

今週、これまでギリギリの最小仕事だけをやって、あとはひたすらのたうっていた。(最小仕事だけでも、それなりの諸々はあるんだけど、まぁ...)

3月中に草稿を書くはずだった放送大学講義ノート28000字分が0文字というのは痛い。文章を書く仕事は、能力的なこともあるのでお断りすることも多いのだが、この講義は、「現代物理学の論理と方法」という科目で、科目の概要と目標を読むと、物理学のしっかりした考え方を、社会人の方が再度勉強できるように工夫して伝えようとする企画になっている。「ふむ、なるほど。これは、ぜひとも全力を尽くしてやりたい。」と思ったので、引き受けることにした。主任講師の米谷さんならではの提案であろう。僕は、そのうちの、1) ミクロとマクロ 2) 平衡と非平衡の2回分を担当する。歩きながら時々考えていて、頭の中には何となくのプランはあるので、まずは5月までに草稿を書いてみて、推敲をゆっくりかけていけばいいだろう。まとまった文章を書くのに3月は貴重な時期だったのだが、それを逸してしまったので、4、5月の通勤時間をあてることにするかな。ここでも執筆の状況説明はするだろうし、タイミングと興味が会う方には査読もお願いする予定にしている。

1月1日の段階で3月中に投稿できればいいと思っていたタイル論文は、印刷レベルでは1月末のノートのままである。しかもそのノートの6割くらいは書き換えが必要になってしまっている。今週は、その理解をめぐってのたうっていたのだった。どうしても転移の核心部が理解できない。数値的観察で、ある種のパーコレーション転移だと考えて矛盾がないことは分かっている。ただし、なぜ、そのパーコレーションが熱力学転移を引き起こすのか、なぜ、圧縮率がカスプなのか、見えてこない。対称性を少し良くしてカイラル対称な模型にすると、カイラル対称性の破れが生じて、その転移点で圧縮率がカスプ的(次数が違う)になる。背景にある不規則タイルとの関係はさらにわからない。不規則状態が固定化することが、熱力学状態と無関係になっている場合と関係する場合があるように見えるが、そのあたりがすっきりしない。さらに、境界だけでバルクを決めるような秩序はおそらくないけれど、何からの不規則秩序が残っているように思えるけれど、それもはっきりしない。こういう諸々のはっきりしないことを、「分からない」と言える程度には状況を把握してきた。そろそろノートを書いてもいいというか、書かざるを得ない。

タイル問題で、positive なことも二つほどある。ひとつは、あるクラスの不規則タイリング統計模型の熱力学関数を既知の規則スピン模型の熱力学関数にマップすることができるということ。12月22日に分かったことで、これは綺麗なままだ。ノートでは、4タイルの不規則基底状態を持つ場合だけについて、磁場中 AF-Ising にマップした例だけをとりあげているが、他の例で面白いのは作れるだろうし、その技術をもうちょっと磨くのも楽しいかもしれない。不規則パタンの数に由来する穴に働くエントロピー力を厳密に書くことが、かなり多くのタイリング模型でできる、ということなので、統計力学の演習問題的にも面白い。もうひとつのpositive なことは、そういう解析ができないタイリング模型の構成の仕方が少しわかってきたということ。これはまだ未熟である。クリスマスには、かなり発見論的にガウス消去法とかを経由して数値的につくっていたが、2月中旬にそれが不要になったけれど、まだ、一般的な構造を見切っていない。そこが見えきっていないことと↑で分からないことだらけなことは関係があるかもしれない。