土曜日
最近の日記に色々とでてくる言葉の解説やら背景やらがあった方がいいだろう、、ということで、ちょっと長めのメモ。
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設定
N 個の玉を1辺Lのd次元の箱に一様に入れる。玉と玉の間にはオーバラップ長に依存した斥力ポテンシャルが働く。オーバーラップがないところではポテンシャルはゼロであり、オーバーラップがなくなるところではポテンシャルがなめらかにつながるとする。
このとき、慣性を無視し、このポテンシャル力と粘性力だけを考慮にいれた運動方程式を考える。系の設定は体積占有率Φだけで特徴づけられる。(境界の影響を無視するために周期境界としよう。)
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基本命題:
系全体のエネルギーを UN とする。十分大きなN に対して、ほぼ確実に、
「ある臨界値Φ_c があって、
U(t--> ∞)=0 for Φ < Φ_c and Φ=Φ_c
U(t--> ∞)> 0 for Φ > Φ_c」
となる。(気になる人は、確率の言葉を使って書きなおしてください。)
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注:転移点がどこかにあることはほとんど自明。厳密な証明を書いてある文献は知らない。Φ_c の値を与えるのは全く非自明。たぶん、厳密な話はない。d 次元系で理論的に評価しようとしている研究はある。
このΦ_c が J-point と最近よばれているものと(たぶん)一致している。[上のような設定で明示的に書いてある文献は知らない。通常はもっとおおらかな書き方をする。]
ジャミング転移とよばれる現象のもっとも原始的な形がこの基本命題である。(この言葉もおおらかな使われ方をするのが普通なので、上の命題としてジャミング転移という言葉が定義されているわけではない。)
この非常に簡単な設定は、なかなか非自明な様相を示す。
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(ほぼ間違いない)予想:
適切に定義された緩和時間τと適切に定義された相関長ξは、
J-point の近くで発散的増大を示す。
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注:Φ < Φ_c では、玉はバラバラになるので、そもそも相関など定義できそうにないと思うかもしれない。確かにt=∞の情報だけでは定義できない。しかし、緩和過程の動的な情報を使って「発散する長さスケール」を定義することができる。この背後にある現象がガラス系で蓄積されてきた「動的不均一性」である。
注:緩和時間と相関長の発散的傾向について、いくつかの数値実験とわずかな理論があるけれど、今のところ断片的な筋にとどまっている。とくに、Φ < Φ_c については、理論は皆無。(上の版そのものではないけれど)、緩和の設定で時間と空間の発散を最初に議論したのがはたのさんで、僕たちはそれをセミナーで早々に聞く機会に恵まれた。
僕たちの攻略方法:
この問題をそのまま理論的に解析するのはまだ難しい。そこで、「力の抜け方」に関してさらなる簡単化*1を行うことにより、ある変態パーコレーションの動力学模型に変換できる。(これはライデンで意識化されて、土曜日にカフェで太田君、岩田さんとしゃべっていたこと。)このパーコレーション動力学模型に対する「平均場模型」が、ランダムグラフのk-core percolation dynamics そのものである。その解析は終わっているのだから、おそらく、k-core と同じ構造が埋まっているだろう、、。それを明示的にしよう。そうすれば、すべての指数はそこから決まるし、何といってもひとつの筋から全部が決まるのがいい。(Silbert さんにすでにしゃべった。 Cool ! といわれた。)
学会までで定性的なレベルのいい感じはつかんでいた。定量的なレベルのいい感じのデータはやっと今朝つかまえた。(「素直になろうよ..」とつぶやいて寝る前に飛ばしたjob.)方向は完全にあっていそうだ。
発展・その1:
上の模型に「ずり」を加えると、レオロジーの基本問題になる。緩和から定常状態へ移行するのは大きな壁があって、まともには手がでないのだけど、スケーリング関係式だけなら上述の話にもとづいて議論できる。理論的にしっかりやるなら、KCM に対して使える理論をつくるのが先だろう。
発展・その2:
実際の粉体は接線力があって、J-point 近くではすでにその寄与が実質的であることは知られている。現象論レベルでも錯綜としているので、数理的なことを考える段階ではない。すぐに思いつくアイデアはあるけれど、それよりも、現象を整理することから。
*1:ゴムをまともに扱うのは簡単ではないが、折れ曲がりだけの玩具模型による簡単化はゴムの本質的な部分を表現している。ここではそれと同様なステップに対応する。