金曜日

ポアンカレー研究所、最終日。今日のメインイベントは、夕方の Christian (Maes)と Karel (Netochny) との議論である。僕が黒板で"SST- microscopic derivation" を説明していく。。。色々な議論があった1時間後くらい。突然、Christian が立ち上がり、窓の外をみている。なんだ... と思っていたら、こちらをみて、ぼそりといった。"glimpse of the truth.." (真実がちらっとみえる..)

今、僕らの話にもっともピントがあうのは、彼らであることは想像していた。それでも想像以上のリアクションだった。Komatsu-Nakagawa 表現に相性がいいように、8月18日にやけくそでつくった(シャノンでない)エントロピーは、彼らにとっては無茶苦茶自然なものだったらしい。実際、彼らがすすめている形式とすぐに関係しているようで、ふたりで議論がはじまったりしていた。(今頃、やってんのだろうな。。)もちろん、それだけでなく、色々な関係が黒板に調和的に並んでいる様に心底感動していた。

昨日から、完全に操作的に制御できない部分が残っていることがこちらでは問題になっていたので、それも正直に喋った。僕自身の納得は今日の昼までにおわらせていたので喋るときに曇りはなかったけれど、実際、黒板にならんでいる諸々をみて、彼らと議論していると、「操作可能性」にこだわるのでなく、次の手やその次の手を早々に考えるべきだ、、と思うようになった。

実際、彼らからでる質問は、僕がすぐにやらないといけないと思っていたことも多いし、彼ら自身は自分たちの理論とあわせてもっと深いところまでみている風でもあった。preprint を出す前に彼らに喋った以上、競争的にならざるを得ない。帰りの飛行機の中は、彼らの理論をもう一度勉強することにした。それでも、これが理論物理の世界だと思う。[誰でも解けそうな問題をいち早く解くのでない。今まで全く見えなかった真実が見えそうになったとき、いちはやく見たいと思う。そりゃ、自分で先にみるのが楽しいにきまっている。]8月のいつかの日記で書いたけれど、ここで下手うったらいかん。しかし、力まない。流れをみよう。今日、Christian とはじめてあったのは、大きなイベントだった。

午前は、それなりに面白い話もあったのだけど、基本的にずっと↑の「操作可能性に関する不十分な点」について考えていた。で、昼に外にでたら、偶然、講演者のCecile とあって、社交辞令的な挨拶をしていたら、一緒にレストランにいくことになった。(講演をろくすっぽ聴いてなかったからさぁ大変...。それでも、ま、なんとか。バックグランドから大体のツボはみえたので、そのあたりで。。)時間いっぱいまで食事がかかって、午後の部にきた。

午後は、Lebowitz と (Christian) Maes。ふたりとも午後に到着した。Lebowitz は、朗朗としているし、introduction で NESS の分類できわめてまともなことをいっていたのはよかったが、どこにむかって何を議論したいのかわからなかった。Christian は、Karel とやっている(時間に関する)large deviationの話。論文よりはわかりやすいが、核心部分はよくみえない。何かヒントになることはないかな、、と思って、ややタフな質問をしてみると、黙ってうろうろ歩きはじめたのでこちらが驚いた。[ちなみに線形応答領域でのエントロピー生成最小原理の(マルコフ確率過程の範囲での)一般的証明が21世紀にはいってChristian たちがやったことになっているのか。。しまったな、、2000 年くらいに僕も証明はおわっていたのだから、さっさと短く論文に書いとけばよかった。ま、多分、多くの人が色々な証明をもっていると思うけれど。]