土曜日

定常状態間遷移の第2法則(Hatano-Sasa)では、熱を「きれいに」分解するのがみそなのだが、残念ながら、その分解は操作的ではない。つまり、その時点では、示唆的ではあるけれど、使いものにはならない。そこで、現象論の整備をする方向にのめりこんでいった。[この日記の最初の方(2000年12月)にも書いてある。]その間、僕は、第2法則関係は、基本的には休憩していたのだが、ヨーロッパの方でぼちぼちと「house-keeping に関する知見」が追加されていた。僕は知っていたものも多いけど、そういう風に複数の人によって、論文に書かれはじめると、それをみて僕も意識化されてくるのでよいことだ。

で、Komatsu-Nakagawa および、Sasa (LD) の刺激で、機は熟したので、今日しかない、と思っていた。想像したとおり、非平衡度の3次以上をみない範囲では、非常にきれいな操作的な関係式が成り立つようだ。Komatsu-Nakagawa の核心部分を僕の言葉でいうと、「house-keeping の消し方」にあることを(休暇をとった)木曜日に理解したので、あとはその思想をHatano-Sasa にもちこんで、追加された知見などをちょい利用すればいいだろう、というまでが昨日の夜までにほんわかみえていた。

で、今日、畳の上に紙を何枚もひろげて、のたくたと書いていた。紙の上のラフな清書までしたが、さてと...あっているかな。(結果として、Komatsu-Nakagawa は使わない。)

何がわかったか、というと。。

大自由度系を考える。そのシャノンエントロピーはもちろん一般には数値的にも実験的にも測れない。しかし、平衡系ならば、熱測定によってシャノンエントロピー差をきめれる(クラウジウス)。この拡張を非平衡定常系でやろう、というのが10年前の動機(のひとつ)である。非平衡定常系では、熱が流れ続けるから、維持熱をひいた分で同じことをすればいい、というのが Oono-Paniconi 提案だが、そんなに甘いものではなかった。確率過程モデルでちゃんと調べると、維持熱を定義するには、"dual transition prob" が必要であり、そうやって適切に維持熱を定義すれば、たしかに、Oono-Paniconi 風の第2法則はつくれるが、"dual transition prob" は操作的には決めれない。そこで、今日、非平衡度の2次のオーダーまでに限定して、維持熱を消してしまう方法を構成していたのである。これにより、非平衡定常系のシャノンエントロピーは、すぐに数値的に測れるようになる。

もちろん、シャノンエントロピーが物理として果たす役割は別物であり、それは現象論や Large deviation などど結びつけて考えないといけない。それでも8年の時間を超えて、ヨーロッパの人々、小松さん、中川さん、田崎さんのおかげで、少し前進したように感じるのは、大変楽しい。

ここまで書いて、間違っていたら、お笑いだが。。。今までこの日記でも何度もそういうことはあったし、まぁ、それはそれで一喜一憂すればいいではないか。。