土曜日

χ_4問題:定理1の証明をちゃんと書く。後半部分は岩田さんも僕もお互いが紙に書いてあるし計算間違いだけをチェックすればいいだけだと思うが、前半部分は雰囲気だけですましていてまだ紙の上に書いてなかった。

χ_4問題としてやっていたのは、サドル接続分岐での(場の)経路の揺らぎの発散の仕方を合理的な摂動の範囲で求めることである。前半部分は、架空時間を導入して、場の経路の揺らぎの分布、つまり、時空測度を、架空時間に関する定常分布として確率過程モデルにマップして、そのモデルを解析する。サドル接続分岐は、そちらにマップされた世界では、時間方向におれまがったキンク解を介して議論される。より具体的には、サドル接続分岐まわりのふるまいを、時間ゼロでの境界条件と臨界からのずれとノイズを摂動としたときの(架空時間を引数とする)キンクの確率的動力学で記述する。その方程式をだすまでが前半部分である。

架空時間の導入がすんだあとなら、(パタン形成の理論のプロならば)方程式を出す必要はなく、直感的な説明で方程式の形を速攻で書くことができるので、その導出は今まで省略していた。実際やってみると、顔面真っ青になった時間が1時間くらいあったことをのぞけば、思った範囲での悩み方で、一応25時までには導出ができた。方程式の形は即答で白板に書いたのと同じ。ただ、少し微妙な点があるので、詳細は岩田さんともう少し検討しないといけないかもしれない。

そうして得られたキンクの動力学の統計的情報からもとの場の統計的情報を構成したい。ここで、weak noise からの第一近似だとキンクの位置の統計はガウス的であることがすぐにわかり、かつ、そのガウス性が臨界点で破綻することになっている。まさにGL と同じ。後半部分では、そこから出発して、もとの場の統計的情報を構成する。これは、レベルセット理論とよばれる手法と同じ構造になっている。レベルセット理論は、非保存系の相分離のスケーリング関数を計算した Ohta-Jasnow-Kawasaki にはじまるとされているもので、OJK を再読したが、ピントがあわなかったので、結局、方針だけを頭にいれて今の問題に適切なような方法をとった。(例えば、OJK のように界面を階段にしてしまうと、今の問題にはまったく使えない。)

キンクの位置の統計がガウスのときは、こうしてもどされた揺らぎは大変綺麗な形を介して発散の構造がみえる。そして、大元の問題にもどると、これがχ_4の発散になる。もっと明示的には、密度の時間相関関数をC(x,t)=<ψ(x,t)> と書くとき、G_4(x,t)=<ψ(x,t)ψ(0,t)>-<ψ(x,t)><ψ(0,t)> のフーリエ変換がχ_4(k,t) 。ψ(x,t) のうち、Iwata-Sasa I では、時間無限側での不安定モードからオーダーパラメータをきめてその寄与だけをとりだして、サドル接続分岐を抽出したが、そのまわりの経路積分のひょうしきからG_4(x,t) に相当するものを計算していることになっている。

論文公開前に丁寧に書きすぎかもしれないが、7月20日の宮下、伊藤、藤堂研セミナーではこのあたりについても説明する予定で、もうすぐその要約を公開するので、Blog で先に書いてもいいだろう。