水曜日

KS entropy 汎用計算アルゴリズムにむけてversion をあらたにふたつ書くが、先は長い。新たにひとつの例題で計算が可能になったが、今のままだとすぐに限界がくる。(実際、計算できない例題はたまっている。)

計算したい動機にくわえて、分離集合の話と熱力学形式の話とモンテカルノの話を全部知っている人などあまりいないだろうし、こういうのを具体的に考える作業は楽しい。Pesin からのずれが非平衡で大事だというのは、間違いないので、この機会になんとしてでもアルゴリズムを手にしたい。

ここには書いてなかったが、Pesin formula : KS entropy=(sum of positive) Lyapunov number は、FDT に似ている。Pesin formula はclosed hyperbolic で成立し、open hyperbolic なら、Pesin formula の破れは、ちょうど escape rate という素朴測定量になる。(=escape rate formula) これは、カオスの熱力学形式をつくる上で、もっとも大事になる熱力学側の関係式で、Gibbs measure は、escape rate formula を成立するようにいれる、という言い方の方が僕にはしっくりくる。他方、FDT は、(時間相関に関して)時間反転対称な系で成立し、あるクラスなら、その破れは、ちょうど発熱という素朴測定量になる (Harada-Sasa)。

ふたつならべて書くと、同じ構造になっているが、形式的類推だけでないように思える。カオスのescape rate formula が1体粒子の決定論的拡散の問題に使えることを指摘したのが、Gaspard-Nicolis であり、実際、そのときの拡散係数は escape ratio でかける。この公式は気にはなっていたが、その問題における拡散とescape rate の関係は自明だし、深い何かがある気がしなかったので追求しなかった。しかし、これ、例題が悪かったのではないか。上の類推からすると、Pesin formula からのずれに対応するのはもっと非平衡特有なことにあるのではないか。で、少しだけ例題を変えると、たしかにそういう状況はたくさんある、、というより、そっちが generic に思える。

それならそれを具体的に計算してみよう、、というのが、KS entropy を Pesin なしで計算しよう、という動機である。簡単な例題の簡単な状況では計算ができはじめているが、まだ、実用には遠いのであれこれ悩んでいるのが冒頭である。