金曜日

2時間ちょいの会議。今回の会議準備は合計10時間くらいかかっているので、講義2コマ分ー3コマ分くらいの労力だった。まだ会議後の仕事もある。

ばたばたしていて紹介を忘れていたが、9月下旬に怒涛の論文公開ラッシュが続いた。 Nemoto-Sasa , Sasa-statphys会議録 , Ueda-Sasa , Itami-Sasaの4編である。他の書きかけのは完成しなかった。特に、Nemoto-Sasa, Ueda-Sasa, Itami-Sasa については、それぞれの院生の特徴/能力がよくでている。研究としてはまだ途上にあるので、それぞれどう発展していくかにも依存するが、何はともあれ良い論文になったと思う。勿論、投稿は投稿でしかなく、掲載まではまだ戦いが続くし、掲載されてもそこが終わりではない。それでもひと区切りにはなっている。以下、簡単に紹介:

Nemoto-Sasa: 新しいrare-event sampling 法の提案。large deviation など「まれにしか起らない事象の統計」を「事象をまたずに生成してしまう」ことで計算する。こういう数値計算法は多数提案されているが、究極目標を「実験室でのレアイベント生成法」におき、それに向けた考え方にもとづく方法の提案である。具体的には、とある物理量を測定し、その結果にもとづいて系を変更し、そしてふたたび測定し... と繰り返すのである。こういう測定+系の変更というのは、実験室実験の操作に近いことをやっていると思っている。そして、この方法を実効的に使うために、「有効記述」の考えを導入する。(この部分は近似になっている。)その結果、数値実験でも今までには得られなかった量が簡単に得られることになる。

Ueda-Sasa:1-RSB 転移点は平均場なら簡単に計算できるが、ランダムグラフ上だと数値実験なみのハードな計算(1-RSB cavity 法)が必要になる。転移点くらい何とかならんのか...という問いに対する答えである。コピーをひとつもってきて重なりの分布関数に特異性がでることとして理解できるので、「その分布関数の特異性」をもっとも素早く検出する方法を考えることになる。僕はその真の理由をまだ完全に理解していないのだが、「片方の配置をとめて片方の分布から熱力学量をつくったあとで止めた配置についての平均をとる方針なら、RSを保ったままの計算で1-RSB転移点を「原理的には」記述できる。」そして、そこからの近似を考えることで、転移点は相当に正確に計算できることになることを見せた。これ他の模型でも同じくらい正確に計算できれば凄いのだが、むにょむにょ....というところ。

Itami-Sasa: 気体;固体;気体で両端の気体を定圧・異温制御すると、動くことの摩擦の他に、クロス効果として「力」が生じる。(力が生じてもよいことは、Onsager で(大体のところは)よいし、現象論的機構として関本さんたちが提案しているものを想定してもよい。)これが不思議なのは、少なくとも理想化された設定は、この力はかなり大きい。系の設定で余分な力が働いても十分に測定できそうな値になっている。玩具的に全ての余分な力を消せれば、気体との散逸だけしかないので 40 cm/s という凄いスピードで動くことになる。)信じられない、ありえない、、という印象を持つと思うが、仮定が実現できれば、結果はあっていると確信しているし、仮定を実現するのは簡単ではないが無理ではないと思っている。