土曜日

数年前、平衡分布は自明で一切の特異性がないのに、動的に異常でエルゴード性を破る2次元模型が構築された。とりねり、びろり、ひぃっしゃー(TBF)。これは、その手のタイプの最初の模型だから、質的に凄い。ちょうど4年前、岩田さんと勉強をはじめ、田崎さんに講義を受け、ジェノバのstat physでとりねりさんが講演して、「普遍性について何かいえるのですか?」と質問したのだった。その後、ランダムグラフk-core 動力学とか、ランダムグラウ上ランダム磁場模型動力学で少しづつ進歩はしてきたけれど、有限次元はあとまわしにしていた。1年前、太田さんが、「拘束ルールに方向依存性のない」という制約のもとで、自明な平衡分布で動的異常な2次元模型を作った。白板で聞いていると、大体は分かるのだけれど、ルールが複雑で、すぐに忘れるし、どうしても細部はぼやける。ま、でもうまくいってそうだ、素晴らしい、と思っていた。

学位論文とか色々あって、その話はまだ論文になっていない。「モデル作っただけではダメで、もうちょっと言いたい」という健全でストイックな(太田さんの)考えで伸びてきたけれど、太田さんは秋からパリの生活に入るし、夏のうちには論文にはしておかないとまずいよ、、とぶつぶついっていた。それで太田さんがまとめにかかっていたのだけれど、太田さんの草稿では、拘束ルールは非常に複雑なままだし、その反対に、非エルゴード転移の証明は簡単化しすぎていて全く解読できない。そこで、拘束ルールについては"simplify"をかけ、逆に、証明は庶民が読める丁寧な説明をかく、という係りを担当することにした。気分で理解するのと紙に説明を書いて理解するのでは全然違い、途中であれこれ混乱したが、やっと今週になって証明を理解した。太田さんの主張は合っているし、核心部分は全て太田さんが作ってあるので、僕は整理しただけで(本当の意味での)頭は使っていないけど。

で、この太田模型、非エルゴード転移の普遍性クラスがTBFとは違うようだ。残念ながら、この部分はまだ理論では言えてなくて、数値実験の観察によっている。(論点がいくつか分かれるのだけれど、ひとつは、directed percolation (DP)クラスの普遍性クラスの問題がある。)DP関係だけに限定するなら、この攻略は、原理的にはできるはずだよなぁ。非エルゴード転移の普遍性の方は、難度がさらに高いが、、うーん、だからこそ考えたい。さて、どこから攻めるかなぁ...。

その問題と、思想的にはまるっきり反対の、不規則充填相に熱力学転移する等方的サイコロ模型(7月模型)についてもともかく出来ることをする。どうもぴたっとこないのだが、眠っていても仕方ないので、やれることをやる。(小林さんからAVSを教わっていて、その課題づくりに最低ひとつの例題を間に合わしたいので。)

しかし、今世紀に入って、熱力学ガラス転移と非エルゴード転移の大きなブレークスルーの両方にじゅりおがいる。「他人のことは気にするな、自分が○○という考えが基本だ。」と院生には偉そうに言うけれど、人間なので他人が気にならないはずがない。でも、目前の問題に、わーとかきゃーとか言っていると、色々な邪念がそのうち消えて、考えたい問題だけが頭の中で泳ぎはじめる。うまくいくとは限らないけれど、そうなったら、まずいことにはならないように思う。