金曜日

カオスという言葉をはじめて耳にしたのは確か大学2年だったか3年だったか。図書館のソファーでおませな友人が1次元写像の振る舞いでワイワイいっていた。説明を聞いたが、それが自然法則と何の関係があるのかさっぱりわからなかった。4年生になって力学系の数学を少し勉強して、変な解軌道の世界になじんできたし、いくつか文献を読んで色々な知識は増えてきた。それでもまだピンときてなかった。

世界が変わったのは大学院に入った後だった。確か秋ごろだったかな。やっとローレンツの論文を読んだ。それまでなんとなく胡散臭い気がしてみてなかった。.... その瞬間、背筋に電流が走った。「物理としておかしい!」と叩かれるだろう近似をつかって3変数におとしたあとの運動を議論している。そして、そこにみえる不規則な運動をつかさどる規則が x_{n+1}=2 x_n, (mod 1), 0 *1

数学的には、Smale の symbolic dynamics が開発されていた後だし、実際、ローレンツはSmale を引用していた(はず)。だから、数学では常識だったことを物理的に見出しただけ、、という意見があるのは知っている。それでも、やっぱり違う。僕は、自然を記述する体系に興味がある。そして、その体系の中に「不規則信号を生み出す規則」がごく普通にあることを示した意義はきわめて大きい。

ローレンツが90歳でその生涯を閉じたらしい。彼がその論文を書いたのは1962年だから、44歳のときか..。ええと....。

*1:だから、僕はカオスを説明するとき「はねる球」から入る。ロジでもテントでもわけのわからん写像から入っても全然感動しない。はねる球で不規則信号をみせて、それを分析して馬蹄形をみせるのが僕にとって素直に理解できる道だから。