金曜日

朝、クリスの講義。不可逆性に関する説明は、最小にして完璧な表現をとっていた。彼は、これからもあちこちで講演をするだろうけれど、正しく理解している人が正しい言明を世界的に普及していく影響は大きいだろう。

しかし、昨日と今日の講義で、J等式以降の発展については、僕には刺激的ではなかった。題材をうまく選んで、うまく講義しているのはさすがなのだが、21世紀にはいってからの色々な発展についても、僕らの周辺ではすべて20世紀のうちに理解しつくしたことにすぎない気がする。論文がたくさんでているのは知っていて、消耗しながらアブストだけは読んでいたのだが、こうして講義でまとまってきくとやはりめげる。また、聞いている人は、初歩的で深い部分よりJ等式がらみの方に質問がたくさんでていた。関本さん*1がぼそっと「情けないことに、これからフランスでも大量に論文がでるよ。」といっていたが...うーん、そうだとすると学問的発展としてはよろしくない気がする。

午後、Olivier のセミナー。僕の言葉でいうと、「粉体多体系におけるmu-wall の構成を目指して」で、その核心部分を(参加者の中で僕以外に)理解できる人がいるとは思えないのだが、プレゼンが無茶苦茶うまく、セミナーとして完全に成立しているように構成していた。粉体系の熱力学をつくろう、、という動機にもとづく様々な背景; Edward measure の話;おもちゃ模型での明示的デモ; など各論的にも興味をもてるようにしていた。発表後の質問で、実験での実装可能性について簡単にきき、セミナー後に時間をとってさらに議論した。面白い。まだやっていないアイデアについても聞いたが、僕が4年前に苦労していたのと同じセンスを共有しているので、手にとるように感じがわかる。彼らのアプローチではなく、僕たちのアプローチで粉体系の熱力学もやる時期かもしれない。

*1:どうでもいいことだが、関本さんも短髪だった。パリの流行らしい。僕は全くしらなかったのだが、パリの流行にあわせてバリカンをいれたことになる。Frederic とは髪のもとの量(つまりはげ具合)から髪形まで僕と似ているので最初びっくりした。