金曜

どういう極限でその近似が正当か、という点がつめきれていない仮定をまだひとつ含むものの、物理的な第一近似と宣言してよいだろう計算結果がでた。χ_4(k,t) のピーク位置までの時間のT-T_c のべき発散の指数 a, そのときk=0 での大きさの発散の指数 b, その相関長の発散の指数を c とすると、a=2, b=3/4, c=1/4 である。

おぉ、そのあたりからきましたか、、といってくれて、かつ、日本語を読めるのは(アメリカにいる)宮崎さんしかしない気がするけれど、そういう数字なのだ。(宮崎さん以外に、そういってくれるくらいにピントがあっている人は是非連絡ください。) 今日は白板で b の計算を岩田さんがしていた。いい加減な考察でb=3/4 だろう、というのは木曜の朝の電車からみえていたが、そこでとばした計算は合理的ではないので、冒頭で書いた仮定以上の近似はなしでストイックに計算をしよう、、というのが、今日の課題だった。

先日まで定理1と呼んでいたのは、T-T_c 固定でweak noise をとばす極限の解析なので、算数上は各指数綺麗にもとまるし、容易に系統的なダイアグラム計算も組めそうなのだが、ちょっと値が離れすぎているし、式で物理をイメージすると気分が悪くなるばかりだった。そこで、その近似をやめて、長波長側から正しい寄与をとりいれる路線に変えた。そこで一箇所冒頭に書いた「えいやぁ」が紛れ込んでいるが、イメージすればするほどそこはいけている気がする。それでそこを認めて具体的な計算にはいったのである。

今日は大変気分がよい。ここのところ、気分がよいのと悪いのをくりかえしているが、これこそが研究の醍醐味でもあると思う。

みっつの指数 a,b, c を一挙に数値積分なしで理論的に出す文献は(たぶん)ない。もちろん、χ_4 をサドル接続分岐での揺らぎの解析で理解しようとする視点は僕ら以外に持ちようがない。(非エルゴード転移をサドル接続分岐として捉えること自体が僕らの研究結果だから。) 最終的にMCT を逆転できるかどうかはまだわからないけれど、計算のステップ毎の論旨を明示しながら実験値と矛盾することはないところまできたのは大きいと思う。MCT の最大の弱点は、論旨のステップが隠されてしまうことで、結果をみせられてもそこで思考がとまってしまうからである。まだミスは多々ある可能性があるので、気を抜かず詳細をつめていって、最終的に丁寧な論文を書かないといけない。(J. Phys A で書いてみて、分量がおさまらなかったら、JSP か。。)