日曜日

猛烈に忙しいわけではななかったが、色々な案件が走って日記をかけなかった。今日も仕事の山だったのだが、つい、AlphaGoとセドルさんの碁を見始めてしまった。途中まででいいや、と思っていたのだが、もう離れようと思った矢先に白78の割り込みが入って、おおお...というので、最後まで見ないといけない気になった。(僕は碁は全くの素人。若いときに時間つぶしにTV解説をみていた程度。本も買っていたが未消化だったし、自分で打っても初心者以下くらいにしかならない。途中経過もリアルタイムではあまりわからなくて、時間遅れでほーとなるくらいだが、現時点での優劣の雰囲気はそれなりに分かる、というレベル。野球をみるのと似たようなものかな。初心者以下くらいにしかできないが楽しめる。)

碁というよりは、人工知能への興味が大きい。まさか僕が生きている間に、人工知能が碁のチャンピオンと勝負して勝っているのを目にするとは思ってなかった。80年代の後半から90年代前半、認知への興味は強くあったし、あわよくば研究できれば..と思ったこともあった。結構な数の本や文献は目にした。多層化して学習させることも既出だったし、ある場合には特徴量を抽出できているかも、という話もあった。ただ、どうも理論的に考える方向は難しく、つくってなんぼの世界で、僕ができそうなことはない、という感じだったと思う。人間の持っている創造力や直観が、計算機で表現できるものなのかどうか、という話題も定番だった。(概念的には確率を入れて、技術的には疑似乱数で代用することで、それらに近いものが表現されるだろう、というのもまたひとつの答えだった。そのかわりミスするけど。。)計算機で苦手そうなそういう方向でわかりやすい例が、碁のプログラムだった。これは決定論的アルゴリズムは無理だろうから、「全体のイメージ」を捉えつつ、目的達成のための数値評価も必要であろう。そういうプログラムは難しいだろうなぁ、質的に違うのだろう、と言っていた。しかし、つくってなんぼの問題では苦戦して、(ときどき聞く範囲、かつ、傍目には)沈んでいったように思った。

ところが、10年ほど前に多層化したマシンの学習ができるようになったらしい。(いわゆるディープラーニング)そこで何が起こったのか僕は知らない。(誰か知っている人にレクチャーを受けたい。)モンテカルロを使った評価を使って、ディープラーニングさせてできたのがアルファGOだと理解している。さて、どんなものか、先週、ニュースを気にしていたが、僕の想像を遥かに超えていた。学習によって、どうやら人類とは違う認知に到達しているのがもっともらしかった。計算が速いとか、たくさん記憶しているとか、そういう能力ではなく、「ここに着手したら最終的にはいい感じになるだろう」という提案をその道のプロが理解できない形でして、かつ、どうやらそれが正解らしかった。これは驚いた。重力波検出よりも驚いた。

というので、2戦目、3戦目と気にする度合がどんどん大きくなった。これは本当に凄いことのような気がする。理論としてどのようにとらえたらいいのだろうか。機械学習を応用として商業的に発展させるだけでなく、「認知(という自然現象)の数理的表現」をもう一段階深めることができるんじゃないだろうか。かって、蒸気機関ができて熱力学が結実したように、新しい基礎理論があるような気がする。そういうワクワク感がある。

それを切り離してもドラマとしても面白かった。3連勝で圧倒的な強さをみせていた人工知能に4戦目も序盤おされながら、白78からの挽回、そして、人工知能側の狼狽 − って、まるで漫画じゃないか。(いや、漫画だとすると陳腐すぎるかも。)

淡々と仕事をするよりもずっと印象深い一日になったのは間違いない。