2016年。正月、3月、GW ...と、時間がとれるたびに、量子系の論文を色々よんで、あれこれ計算して、あぁでもない、こうでもない、とのたうっていた。その話を論文として投稿するところまでいけたのは、何よりもうれしいことだった。生まれて初めての量子系の論文で、精神的にびくびくする、というか初々しい感じがする、貴重な体験だった。勿論、ひとりでできたわけではなく、杉浦さん、横倉さんが指導者の役割を果たしてくれたからこそである。短期記憶など能力的にかなりやばい感じになっている中で、新しいところにいけたのは心底うれしい。また、20年来のライフワークであるSSTに大きな動きが始まっており、まだ途上であるが、これもワクワクする。この二つだけで、研究としては良い年だった。

映画館に4回もいった。(シンゴジラ2回、君の名は。この世界の片隅に)子供が一緒でなく行く映画館はおよそ25年ぶりのような気もする。もののけ姫千と千尋もこどもと映画館にいったが、どちらもそれほど強いインパクトはなかった。どちらかというと秀作を惰性で観ている感じだった。ところが、今年みたこれらの映画はそれぞれ強い個性があって、目がさめた感があった。シンゴジラの映画としてこういうのがありえるんだー感に圧倒された。君の名。を見たあとは、おそらく、高校生のときガラガラの映画館でカリオストロをみたあとの感覚に近かった。これには本当に驚いた。世界は変わっていく、、ということを実感したのも大きい。

変わっていく、といえば、アルファGo も驚いた。碁が人工知能で人間を超えるときがこんなに早くくると思ってなかったし、しかも、超え方が凄い。あの狭い空間の石の配置だけでも、人類が囚われていた世界観をあっさりと破っていく様をみると、自然法則を追及しようとする研究者の営みもおそらく重箱の隅をいじっているに過ぎないのだろうと感じてしまう。もっと自由にもっと大胆に世界をみることはできるはずなのに、何も見えていないのだろうと思う。

そういうわけで2016年は、近年になく、記憶に残る年だったと思う。